シャルロッテ様の憂鬱

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「…やっと、俺を見てくれた」 彼の言葉にあ、と思い顔を背ける。 「っ、はな、離せ…!」 彼女が引っ込めようとする右手を掴んだ手に更に力を込めるマリウス。 「姫様が…」 「…!?」 「『彼とは何でもないのですから、何もありません』と仰った時、」 「…」 「それは事実なのに」 「…マリウス?」 「心臓が抉られるように痛かったのです、」 苦悶の色を浮かべ潤んだ瞳をシャルロッテに向けた。 「姫様を傷付けて、大変申し訳ありませんでした」 「…マリウ、ス」 彼は彼女の右手を自分の胸から外すと、壊れ物を扱う様に指先に優しくキスをした。 「…!?」 動揺して朱に染まる頬を人差し指の背で優しく撫でる。 距離を詰めるマリウスに 「…や」 と口だけの拒絶をするシャルロッテ。 彼女の濡れて潤んだローズピンクの唇に口づけをす
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