シャルロッテ様の憂鬱

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スクリーンの前に進み出た長身痩躯の将校が 「皆様お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。陸軍通信科 システム部少佐 ジークヴァルト=ヴァレンシュタイン であります。」 と自己紹介する。 「以前から着手しておりました、交戦用訓練装置のシステム…」 (あー、面倒くさいな。話が入ってこん。) 「詳しくは、シュタウフェンベルク中尉から説明があります。中尉、」 「はっ」 (え、さっきの…) 「マリウス=シュタウフェンベルク中尉であります。少佐に代わり説明させていただきます。」 「キイィーン…、」 一瞬耳鳴りがしたかと思ったら、周りの声が一切聞こえなくなった。 (え、何?難聴になった?) ドクドクと高鳴る鼓動、乱れる呼吸。 (あ、あれ?息ってどうやって呼吸するんだっけ?) 何故だか知らないが、スクリーンに向かって説明するマリウスが薔薇を背負ってキラキラに見えた。 時折ずり落ちて来る銀縁の眼鏡を押し上げる仕草に心が踊る。
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