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 マヒワは廻国修行の道すがら、バンを相手に双極流の技をまねて工夫を重ねた。  バンに剣を持たせて、ビンズィの見せてくれた、素手で武器を奪い取る技を思い出しながら、型をつくっていった。  研究していくと、剣だけでなく、棒などのほかの武器にも応用の利く術理が多様にあることがわかった。  いまマヒワの目の前に、バンが剣を構えて立っていた。 「おじさん、今度は上段から打ち下ろしたら、すぐに刃を逆さにして斬り上げて」 「こうですかい?」  バンは、マヒワから言われたとおりの動作を試みる。 「そうそう。それじゃ、本番ね――」  バンがもう一度同じ動作をしようとして、剣を振りかぶったとき、マヒワが飛び込んできて、バンの腹に当て身を入れた。 「ぐえっ!」  相手の握っている武器を奪うとき、相手の間合いに相当接近する必要があるが、そのとき雷拳の当て身の技術が有効であることも判ってきた。  マヒワはこうした新しい技の試行錯誤を結構楽しんでいるようだが、相手を務めるバンにとっては毎回が苦行だった。  いまも、バンは当て身をくらい、息が詰まっていた。  苦しくて前屈みになり、剣を振り下ろした勢いを止められず、地面を叩きそうになった。  いけないと思って、バンは下ろした剣を元の位置に戻そうとする。  その動作にマヒワが拍子を合わせて、バンの手を包むように両手で挟むと、バンが握っている剣で顔を切りつけるように捻ってきた。  バンは顔面に迫ってくる剣先を避けるのと、両腕がねじられるのとで、からだごと宙に跳ぶしかなかった。 「ひえぇぇ――」  バンが悲鳴を上げるたびに、マヒワの技は上達していった。
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