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門弟たちの瞳の輝きが、純粋に武術を嗜むものとして御光流剣術への好奇心からなのか、単に若い女性に興味を持ったからのかが判断できず、マヒワはどのように応対すればよいのか困っていた。
――それはそうと、なぜ師範代がドヤ顔なのよ?
そんなマヒワの思いをよそに師範代が稽古を続けるよう指示を出すと、門弟たちは各自の位置に戻り、鍛錬の続きを始めた。
先ほどよりずいぶん気合いが入っているようなのは、気のせいだろうか。
その様子を見て、師範代が鼻先で笑う。
師範代はマヒワの方へ向き直ると、「師範を紹介しますので、どうぞこちらへ――」といって、駅舎に導いていく。
行き先は、駅舎のなかだった。
外から急に暗いところに入ったので最初はわからなかったが、目が慣れてくると駅舎の入ってすぐのところが十人分ほどの待合室になっているのがわかった。
とはいえ、つぎの駅馬車は翌日の朝なので、いまは誰もいない。
ひとの気配は、待合室の奥、駅舎の角の方にあった。
待合室を通り抜けると、小さい円卓を囲んで三人の初老の男たちが座っていた。
みんな同じように日に焼けていたが、そのうち一人の姿勢がとてもよく、いかにも武術の鍛錬を重ねた体つきをしていた。
残りの二人は、馬の世話や馬車の運行管理をしている者たちのようだった。
「師範、マヒワ様をお連れしました」
案の定、師範代は、体格のよい老人にマヒワを紹介した。
師範代は、師範と呼んだ老人と何やら小声で話し始めた。
たぶんマヒワがお願いした仕合の件を諮っていたのだろう。
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