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 相談が終わったあと、老人は腕を組んで天井を睨んでいた。  逆に師範代は地面に視線を落としている。  結果、マヒワは放置された状態になっていた。 「あのぉ……」  あまりにも展開がないので、しびれを切らしたマヒワが老人に声を掛けた。 「――おお、これはこれは、遠いところにご足労願って申し訳ない。千刻流棒術師範のガラムです」  と、ガラムと名乗った老人は、立ち上がってマヒワに近づいた。 「御光流剣術のマヒワです。本日は見学をお許しいただき、ありがとうございます」 「いえ、いえ。華やかな動きの剣術と比べれば、棒術の技など地味なものです。ご覧に入れられるものがあるかどうか。それにしても、御光流とは懐かしい。ご宗家のマガン元帥はご健勝であらせられますか?」 「ありがとうございます。マガンは至って元気でおります。懐かしいといわれましたが、ガラム師範はマガンをご存じなのですか?」 「ご存じもなにも、辺境伯の乱から岩塩戦争にかけて、マガン元帥の元で戦っておりました。もっともあのころは、わしはただの部隊長でしたから、マガン元帥は雲上のお人でありましたがの」 「(いくさ)にでておられたのですね」 「そう、あのころはわしも若かったから、いくらでもからだが動きましたなぁ」  ガラムの話に、マヒワは頷いて調子をあわせた。 「そういえば、マガン元帥の剣術を一度だけ戦場で間近にみる機会がありました。あれは剣術なのかどうかわかりませんが、術といえば、そうなのでしょう。あれは他の流派では全く見かけない技術ですな」 「と、おっしゃいますと――」
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