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「マヒワ、そんなに顔を近づけては危ないよ」 「お父さん、これ、とてもきれい。あたしも大きくなったら、この剣がほしい!」 「マヒワは勇ましいな。こんな剣がほしいのかい?」 「だって、あたし、お父さんと同じ剣士になるんだもの」 「マヒワが大きくなって、色々経験して、本当の強さがわかったら、この剣をあげよう」 「わぁ、ほんとう? わかった、あたし絶対に強くなる! 強くなって、お父さんから剣をもらうの!」 「父さんも、その日が待ち遠しいよ」  父娘の手は笑顔でしっかりと結ばれていた。  二人があずまやに着く数歩手前で、屋敷の方からイカルを呼ぶ声が聞こえた。  その声に応えるため、歩みを止めた父に、マヒワは不満げな顔だ。  いまこの手を離せば、つぎにいつ手を繋ぐことができるのか、わからない。  普段でもあまり家に帰ってこないのに、ここ最近、もっと仕事が忙しくなってきたのか、帰ってくる頻度がさらに減ってきている。  今日なども、三週間ぶりに会う父なのだ。 「あなた、マガン老師がお見えになりました。どちらでお会いになりますか?」  声をかけてきたのは母のルリだった。 「あずまやで会おう。ご案内を――」  イカルはよく通る声で応えると、マヒワの顔がよく見えるようにしゃがんで、繋いでいたマヒワの小さい手を、掌で包んだ。  ――あたしといるのに、どうして会っちゃうの?  とマヒワは心の中で愚痴る。 「父さんにとって大切なお客様がお見えだ。少しお話をしなければならないから、お母さんのお手伝いをしてきなさい。また後で遊ぼう」
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