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ガラムがそう言いながらマヒワを探るように見ると、マヒワの眼は大きく見開かれていた。
「――それ、父です」
思わず言ってしまってから、マヒワはあわてて口元を覆った。
「あれ? あなたは元帥さんの娘さんでは?」
そういってガラムは何かを思い出すように、顎に手を当てて顔を上に向けた。
「ああ、宗廟事変か……。元帥は、あの亡くなった王都守護庁の長官の娘さんを養女にされましたな。その養女があなたでしたか。どうりで、むさくるしい元帥とは全く違って、すっきりとした凛々しいお方だと思った。それに、元帥の実の娘さんだとしたら、あまりにもお若いと思っておりました」
と、元帥に対して大層失礼なことをさらりといったガラムが、あらためてマヒワの顔かたちを眺めて、「とてもお父上に似ていなさる」と断言した。
「ガラム師範、あたし……泣きそうです」
マヒワの瞳が本当に潤みだすのを見て、ガラムが微笑む。
「あんた、本当に剣聖さまかい?」
「剣聖だなんて、自分でいったことないですよ。周りのひとがそう呼んでいるだけです」
「あんたは、不思議な方ですな。わしの孫のようにも思えてきましたわい」
マヒワの呼び方も少しなれなれしくなってきているのも、その現れのようだ。
二人が修練場に到着すると、師範代をはじめとする、門下生が整列していた。
「せっかくお越しいただいたので、これから棒術の型をお見せしましょう」
というと、ガラムは弟子たちに号令をかけた。
弟子たちはガラムの声に合わせて、次々と棒術の型を合わせていく。
師範代は偉そうに胸を反らして突っ立ている。
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