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「盗賊を捕らえる型も棒術にはあります。最近では寧ろ捕り物の方が多いですな。棒術家が門衛の役についているのも、このためです」 「それも見たいです」 「――もちろん」  といって、こんどは師範自ら棒を手にした。  型の相手は、先ほどから、ちらちらとマヒワにあつい視線を送っていた師範代だ。  マヒワは意識して無視していたが、ガラムも気づいていたらしい。  いきなり指名されて動揺を隠せない不埒な師範代の手足に、ガラムの繰り出す棒が絡んでいく。  師範代はあぐらをかいた姿勢にさせられたうえに、手足を棒にからめとられて、身動きできないでいる。 「抵抗しようとすれば、脇を支点にして肘をこじりあげますと激痛が走りますから、すぐおとなしくなります。ほれ、このように……」  ガラムが棒を捻りあげると、師範代は情けない悲鳴をあげた。 「おもしろいですね。あたしもやっていいですか?」  棒術の技がおもしろいのか、悲鳴を上げる師範代がおもしろいのか。  ガラムが頷くと、弟子の一人がマヒワに棒を差し出した。  ガラムから技を解かれた師範代は痛そうに肩をまわしたり、肘をさすったりしていたが、マヒワが相手とわかると、妙にうれしそうな顔をした。  周りの弟子たちから突き刺さる痛い目線も、どこ吹く風といった様子だ。  マヒワは師範代と対峙すると、先ほどの動きを器用にまねて、師範代をからめ取った。 「えい、えい」  とマヒワが棒を捻りあげると、師範代が先ほどより痛そうな悲鳴をあげた。  師範代の悲鳴を聞いてもマヒワが技をゆるめないのを見て、師範も弟子たちもおもしろがっている。
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