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師範代はガラムからの指示だといって、ふだんから、相当な上から目線で弟子たちに接しているらしく、この修練場での人気は全くないようだ。
その師範代をひいひいいわせているマヒワに、弟子たちは声なき声援を送った。
「そろそろ次の説明にかかってもよろしいかな?」
本気で痛がっている師範代を、さすがに弟子たちを同じように面白がって観ているわけにはいかず、ガラムは先を促した。
「えっ? ああ、ごめんなさい!」
さすがにまずいと思ったのか、マヒワはあわてて技を解いた。
「師範代、だいじょうぶですか? ありがとうございました」
「な、なんのこれしき!」
と答えたものの、相当に関節が極まっていたようで、両手でからだのあちこちをさすっている。
それでもマヒワの相手になれたのと、心配までしてもらったことがうれしいのか、師範代の表情はゆるんだままである。
そんな表情をガラムは苦々しく見ていたが、マヒワに顔を向けなおすと、真剣な声でいった。
「我が流派は、本当のところ、棒術じゃないんですよ」
「ええっっ!」
マヒワは驚いた声を上げたが、ほかの者の頷いているところを見ると、知らなかったのはマヒワだけらしい。
――まぁ、弟子たちは自分の流派のことだし、知ってて当然か。
「いや、だって、棒術、やってるじゃないですか? あたしも、いまもやりましたし。流派の名称にも『棒術』って……、じゃあ、なんですか?」
マヒワが答えを求めて、まわりの弟子たちを見渡したが、弟子たちはガラムに説明を任せている雰囲気だ。
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