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 それに気づいたマヒワの視線が戻ってきところで、ガラムが説明を続けた。 「現在、棒術を専らにしているのは門衛の役割があるからで、戦場では棒術を使いません。もとは槍術です」 「なるほど。それで、槍の穂先を斬り飛ばされたときの術が『棒術』とか、ですか?」 「さすがは剣聖さま。聡いですな」 「いや、剣聖さま、関係ないです」  鼻先で手を振って応えたマヒワに、ガラムは意を決したように大きくひとつ頷いて言った。 「せっかくなので、今回は槍術と剣術の仕合をしていただきたい」 「やったー! といいたいところですけど、それって、せっかくという難易度じゃないですよ!」  マヒワは棒との仕合を望んでいたが、槍が相手とは想定外。  正直いって、あわてた。  武器の長さの違いは、そのまま間合いの違いとなる。  棒よりも間合いの長い槍の方が、剣にとっては難敵だ。  しかも、槍は先に刃物が付いており、その重みで螺旋にしなりながら身に迫ってくる。  (かわ)し難いという点では、棒による攻撃を遙かにしのぐ。 「わしは戦場でいつも思っておりました。実践では、弓矢のつぎに殺傷能力の高い槍に、どれだけ剣術が対抗できるのかと――」  と、ガラムがマヒワに言った。 「それは、あたしもそのように思うところもあります。何しろ槍は剣術よりも遠くの間合いから攻撃できますし、破壊力もあります。戦場での死傷者は、弓矢が七としたら、槍が二で、剣は一もない、とマガンから聞いています」
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