17/23
前へ
/220ページ
次へ
「でも、戦場での剣聖さま、あなたの実の御父上は、槍とも対等に、否、それ以上に強くていらっしゃった。あれをもう一度、この眼で確かめたい」 「はいっ! そりゃ、もう、あたしもです!」  勢いで、マヒワは肯定ともとれる返事をしたが、それは、剣聖であった父イカルの動きを自分も見てみたいという意味のつもりであった。  しかし、ガラムは槍との仕合を引き受けたと捉えたようで、てきぱきと弟子たちに支度を命じ始めた。 「いえ、あたしも父の剣技を見ていみたい――、という意味での『はい』でして、……ええっと」  両手を振って、慌てて否定しようとするが、もう遅い。  マヒワの目の前で、弟子たちは早々に、稽古用ではあるがマヒワの身長の倍ほどもある槍をからだの脇に立てて横一列に並んでいた。 「よろしくお願いします!」  声も一礼も気持ちよくそろっている。  つられてマヒワも一礼する。 「えーっと、師範。ひょっとして、槍衾(やりぶすま)で一斉に打ちかかってくるなんて展開じゃあ……」  とおそるおそるうかがうマヒワに、 「槍の基本は一斉に突き出す、打ち降ろすにあります」  と、ガラムは無慈悲に即答した。 「それも、打ち降ろすというより、叩き下ろすような意識でやりますな」  弟子たちも、初めての経験に瞳の輝きが増している。  ――槍の一斉打撃を相手になんて、やったことないよぉー。  というマヒワの心の悲鳴は届かない。 「ちょっとだけ、動きを見せてもらえませんか?」  というマヒワのお願いに、ガラムは頷いた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加