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ガラムは、弟子たちに向き直ると、号令を掛けて、突きと叩き落としの一斉動作をやって見せた。
突きは思った以上に速く、叩き下ろす動作は思った以上の破壊力がありそうだった。
いずれにせよ、当たればマヒワのからだが吹っ飛ぶこと間違いなし。
――怪我をさせないようにするのは難しいかも……。
マヒワは、自分が負けることなど考えていなかった。
むしろ、相手に怪我をされて、のちに恨まれることのほうを恐れていた。
しかし、これはマヒワの特異な感性といってよい。
槍と剣とでは攻撃の間合いが違う。
遠間で攻撃できる槍の方が、剣よりもはるかに優位だ。
実際、戦場での死傷者数は、剣よりも槍のほうが一ケタ多い記録が残っている。
それだけに、剣で槍を圧倒するのは、よほど相手との技量差がないと難しい。
マヒワも御光流の修練場で槍を手にした兄弟子に稽古することは何度かあったが、しょせん相手は槍術の専門家ではないので、槍の攻撃を制するのを難しいと思ったことはなかった。
だが、修練を積んだ槍遣いは、槍を繰り出す早さと正確さ、そして破壊力が全然違う。
すこし穿った捉え方をすれば、剣術家に対して相当な悪意を感じる。
――ひとの善さそうな方たちばかりなんだけど、……考えすぎかな?
弟子たちが槍を構え直した。
マヒワも思考を断ち、木剣を正面に構えて集中する。
自分の呼吸に集中していくと、刻が止まったかのような感覚になる。
その感覚が、相手の動作の出鼻を捉えた。
一斉に槍が持ち上げられるのと同時に、マヒワは右端にいる弟子に向かって大きく踏み込み、反転した。
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