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「気合いとは違いますね。突きなら突きの、叩き下ろすなら、叩き下ろす声があるんです」
「かけ声のようなものですか?」
「それに近いかな。それで、その声にからだの動きを乗せていくんです」
「剣術なら、気合いにからだを乗せていく、という教えがありますが……」
「似てますけれど、気合いに乗せるのは武術の動作のどれにもあることでしょう。誰しも戦場は怖いですから、大きな声を出して、その声に自分の勇気を乗せていくんですな。その声を使い分けると動作が一つにまとまる」
「さっきもやってました? その声を合わせるの?」
「ありましたよ。声と言っても吠えているような感じですが」
ガラムは弟子たちを再び構えさせると、「ヒュー」と笛を吹くような高い声を出した。
すると、弟子たちの槍先が上段に揚がり、ガラムが「エイッ」と発声すると、一斉に叩き降ろされた。
「き、気づかなかった……」
――こんなわかりやすいことに気づけなかったとは……。
マヒワは己の観察力の乏しさに、へこんだ。
「でも、これを教えてくださったのは、マガン元帥ですよ。まぁ、正確に言えば技法を盗んだといえますがね。声の使い方を変えて、いろいろと工夫してから、槍隊の攻撃力は劇的にあがりましたな」
マガンからいろいろ教えてもらってはいるが、声を使い分けるとは聞いたことがなかった。
教えてもらっていないことを寂しく思ったが、これも収穫だ、とマヒワは自分を励ました。
――ちょっとへこんだけど、仕合は上手くいったし、棒術家の皆さんとも仲良くなれたし、よしとするか。
と、マヒワは前向きに考える。
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