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二階から通りを見ていても、武術家らしい身のこなしで通りを歩いて行く姿を幾人かみつけることができる。
なおしばらくマヒワは通りを見ていたが、バンの姿を見ることはなかった。
――おじさんにしては、珍しいこと。
いや、マヒワとの廻国修行で、連絡がひとつも無いのは初めてのことだった。
多少不安にもなってきたが、本格的にお腹もすいてきた。
もし何かあったら、空腹で動けないのもいけないと思い、先にひとりで食べることにした。
マヒワは剣を腰帯に差して宿を出ると、通りの向かい側にある料理屋に入った。
宿屋にいなかったら、バンとはこの店で待ち合わせる約束をしていたのだ。
店のなかは結構混んでいた。
四人掛けの席が多いが、八人で囲むような大きな席も奥の方にあり、早くも酒が入って、声の大きい席もいくつかあった。
逆に、マヒワのようにおひとり様のほうが珍しい。
店に入ったとき、隊商の護衛役のような体格が厳つくて汗臭そうな連中からの視線を感じたが、マヒワが剣を持っているのを見ると、それ以上視線を合わせてこなかった。
ただ、その後もマヒワを意識していることは、雰囲気で判る。
表通りを眺めることができる席が空いていたので、剣を鞘ごと抜いて、そこに座った。
なんだか一人だけ浮いた居心地の悪さを感じるので、手早く出てきて、さっさと食べられそうな麺類を中心に数品を注文した。
料理が出てくるまでの間、バンが通るかもしれないと思って、表通りを眺めていた。
――おじさん、どうしたのかな?
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