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「表にでましょう。お店やお食事をされている皆さんに――迷惑です」
「お、おう! それでは、表で呑みましょう!」
ただのお嬢さんではないと悟ったのか、ちゃかそうとする言葉が滑っている。
マヒワは硬直している店員に、「すぐに戻ってきます。あたしの注文した料理は席に運んでおいてください」と声を掛けると、剣を腰に差して、料理屋の戸口を出た。
酔っぱらいたちは、マヒワの脅える顔を見たかったのに、全く当てが外れた。
逆に思わぬ展開になったせいか、無様に慌ててマヒワの後を追った。
表通りに出ると、さっそくマヒワを四人が取り囲んだ。
マヒワを完全になめているのか、剣を抜くつもりはないようだ。
通りを歩いていた人々も不穏な雰囲気を感じてか、手近な建物の壁に身を寄せたので、マヒワたちの周りには大きな空間ができた。
外は薄暗くなってきていたが、通りを挟んだ店舗の灯りで、マヒワたちの周囲は十分に明るい。
「つかまーえた」
後ろにいた酔っ払いがマヒワを抱きすくめようと両腕を胴体に回してきた。
マヒワは、酔っ払いが腕を巻き付けてきた瞬間に、からだの向きを変えつつ、相手の右袖を左手で深く握って絞り落とし、相手の左肘を右手で真上に押し上げた。
滑らかなマヒワの動きで、腕を回してきた酔っ払いのからだが地面に平行に伸びて宙に躍ると、そのまま背中から地面に落ちた。
「ぐえっ!」
地面に仰向けに落ちた酔っ払いの胸の急所に、マヒワは踵を落とす。
その動きに何のためらいもなかった。
気絶した相手はピクリともしない。
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