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などと観察しているうちに、お茶が届いた。
マヒワはお茶を女の子の前に置く。
「弟子になりたいって、あたしのような剣術家になりたいの?」
「わたし、強くなりたいんです!」
なんだか自分と被るところがある、とマヒワは思った。
「どうして、強くなりたいの? 簡単には、強くなれないよ。時間もかかるし」
「さっき見てました。師匠があっという間に男の人たちを倒して。わたし、感動しました!」
女の子は、きれいな瞳をさらにキラキラさせて、
「この方の弟子になったら、きっと強くなれる。わたし、ぴーんときたんです」
と身をのりだしていうものだから、湯呑みを倒さないように、マヒワが横にどけてやる。
女の子にはマヒワの顔しか写っていないらしい。
「たいへん感動してくれたのはうれしいけれど、あたしはまだあちこちを修行で廻っている最中で、弟子をとっていないし、誰にも剣術を教えてないの」
女の子は自分の願いが叶いそうもないことを言われ、相当に落ち込んだ様子をみせた。
「うわぁ~。なんか、ごめんね……」
マヒワは、ひとの悲しむ顔を見るのが大の苦手だった。
「そ、そう。いまはだめなだけで、修行が終わったら、弟子をとったりもするだろうし、そのときならなんとか……」
と、マヒワは慌てて、なぐさめようとするが、女の子は最後の望みを絶たれたかのような落ち込みようだ。
――もう、おじさん、助けてー! なんでまだ帰ってこないのよー!
このようなとき、バンであれば、この女の子のよき相談相手になれるにちがいなかった。
バンは密偵だけあって、相手から話を引き出すのが抜群に上手い。
とにかく話しやすいのだ。
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