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 ――なんであんなに話しやすいんだろう……。  バンならどうするだろうか、とマヒワは考えた。 「……えっと、さっきも尋ねたけど、なんで強くなりたいのかな?」  マヒワはうつむいた女の子をのぞき込むようにしていった。 「いま、あなたを弟子にするのは無理だけど、困ったことがあるなら、力になれると思う」 「弟や妹たちを守るために、わたしが強くないといけないんです!」  女の子は顔を上げると、きれいな瞳に力を込めて、真っ直ぐマヒワを見て言った。 「きょうだいがいるんだ。でも、親御さんは?」 「両親はいません」  ――さっきから、なんか被るなぁ。この子の境遇。 「わたしたち、孤児院に住んでいるんです。でも、先生がいるので、平気」 「んじゃ、その先生が、親代わりなのね。で、あなたが一番年上のお姉ちゃんなの?」 「お兄ちゃんがいたけれど、先生が留守のときに、知らない人たちが来て、どこかに連れていっちゃったから、それで、先生が探しにいくって」  話しているうちに女の子が泣きそうな顔をしだした。 「そのあと、先生も帰ってこなくて……」  女の子は、涙をこらえて言葉を続け、 「――それで、わたしが、先生が帰ってくるまで、一番年上のわたしが、みんなを守らないといけなくて……」  声を詰まらせながら、それでも伝えようとがんばっている姿がいじらしい。 「それで、強くなりたいと思ったのね」  女の子は、こくん、と頷く。 「それで、先生を探そうとして、人のたくさんいる街に出てきたんです。でも、いい先生が見つからなくて、困って、疲れてきて……」  女の子はずっと立っていたらしく、話ながら脚をさすっていた。
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