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「でも最後に、師匠を見つけたんです」
女の子は「師匠」というところで、再び瞳をキラキラさせた。
――ああ、視線がまぶしい。
なぜ、「先生」が「師匠」になったのかは気になったが、それ以上にマヒワはとても重要なことに気づいた。
「ところで、あなたのお名前は? えーっと、あたしは、マヒワ」
――いかん、いかん。師範代のときの二の舞いになるところだった。
マヒワには、ひとの名前を確認しない、悪い癖がある。
御光流の修練場でも、長年親しく稽古や話をしていながら、そのひとの名前を知ったのはつい最近、ということが度々あった。
「わたし、ライラです」
「それで、ライラちゃんは、その知らない人たちがまた来ると思うの?」
「わからないです。でも、先生が、備えあれば憂い無し、って言ってました」
「ふーん、偉い先生ね。いいこと言うわ」
「だって、先生は剣聖だもん」
「へー、剣聖なの。えっ、けんせい! けんせいって、あの剣術の?」
マヒワは、自分のことを棚に上げて、『剣聖』という言葉に過剰な反応を示す。
「そう。先生は、ひとから剣聖と呼ばれるのは、とても嫌だ、って言ってました」
――わかるわー、って、そうじゃなくて、その「剣聖」って誰よ? んで、剣聖の世界って、ちょっと狭すぎない?
――あたしと同じ御光流じゃないとしたら、ほかの流派の誰かで、双極流のアオジさんとは違うひとね。
などと、マヒワは現在「剣聖」と呼ばれている顔ぶれを思い浮かべる。
それにしても、両親がいなくて、剣術の先生に育てられた、というのであれば、マヒワも似たようなものだ。
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