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そういうやりとりのあと、二人して宿屋に戻った。
それで、いま、マヒワの隣には、ライラが寝ている。
よほど気が張って疲れていたのか、ライラは寝台に横になると、あっというまに寝息を立てた。
反対に、マヒワのほうは目が冴えてしまって、全然眠れないでいた。
マヒワが寝られない一番の理由は、バンがいまになっても帰ってこないことにある。
――ぜったい、おかしい。ありえない。
とはいえ、バンは探索に出ているのだから、どこへ探しに行けばよいのか、見当も付かない。
結局、辛抱強く待つしかないのだ。
こうやってバンのことを思っていると、あることに思い至った。
表通りの様子に気をとられ、酔っぱらいたちが背後に来ていることに気づかなかったこと。
料理を食べるのに必死で、ライラのような子どもが目の前にいるのに気づかなかったこと。
まったく人の気配を感じ取ることができていない。
これでは、剣聖という以前に、剣術家としていかがなものかと思う。
――ここまで、わたしは未熟だったとは……。
ならば、なぜ、いままでこういうことがなかったのか?
バンが一緒だったからではないだろうか。
食事のときは、バンはマヒワの向かい側に座る。
ときにはマヒワの背後に目を凝らしていたり、ときには傍を通り過ぎる人に気さくに声を掛けていたりした。
これらはすべて、怪しい人たちを牽制しつつ、マヒワがその者たちを意識するよう、あえてやって見せていたのかもしれない。
――あたしがいままで無事にやってこられたのも、おじさんのおかげだったとか……。
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