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「はい、わたくしはスイリンと申します。バンのもとで探索や諜報活動をおこなっております」
「あたしのほうは、はじめましてですけれど、スイリンさんのほうは……」
「はい、ご推察のとおり、お嬢様のことは小さい頃から存じ上げております」
「ひょっとして、知らないところで、いろいろ助けて頂いていたとか……」
先ほど横になりながら考えていた、「バンに守られていたのでは」という疑念は、
「はい。わたくしどもにとって、お嬢様は主筋にあたる大切なお方ですので、お守りするのは当然です」
というスイリンの答えで、すっきり疑念が晴れた。
「あのぅ、主筋というのは、ずいぶんとおおげさなのでは……」
「いいえ、わたくしどもの諜報部隊は、もともと王都守護庁の長官であられたイカル様によって組織されました。宗廟事変ののちは、マガン様にお仕えしておりますが、いずれにいたしましても、マヒワ様はお嬢様でいらっしゃいます」
――それはそうなのでしょうけれど、王家の諜報活動を担う部隊ならば、仕える先が違うのでは、とマヒワは思った。
そんなマヒワの思考を読み取ったのか、
「イカル様には、わたくしどもが一生かけてもお返しできないくらいのご恩がございます。以前から国家に属する諜報部隊ではなく、イカル様個人にお仕えしていたとお考えください」
と、スイリンは淡々と言う。
「――わかりました。それで、おじさん、じゃなくて、バンはどうしたのですか?」
「……はい。実は、わたくしどもも探してはいるのですが、行方不明でございます」
「ええっ!」
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