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「はい。特に取引量の多いところから、現地に出向いて調べておりました」
「でも、おじさんは毎日帰ってきてたから、そんなに遠くないところですよね」
「ご推察のとおりです。取引先は近接する都市国家タカワンを拠点とする商会なのですが、薬包紙が運ばれていた先は、この街の郊外にある、いまは使われていない砦でした」
それを聞いたマヒワは、「じゃあ、あたしも行ってみます」といまから行きそうな勢いをみせた。
「お待ちください、お嬢様!」
慌ててスイリンが、マヒワの腕を掴んで止めた。
「バンが砦に侵入したのか、いまはわかりません。判ったことがあれば必ずお知らせしますから、それまでは修行にご専念ください」
――う、うう……。
闇雲に動いても無駄なことは、マヒワも理解している。
ただ、このような状況で修行に専念できるとは、少しも思えなかった。
マヒワはもどかしさでこぶしをきつく握りしめる。
マヒワの苦悶の表情をみて、スイリンが意を決して言った。
「お嬢様。わたくしは――バンの娘でございます」
二人の目が合った。
――おじさんの安否をいちばん案じているのは、スイリンさんだ。
「……わかりました。スイリンさんも無理をしないでください。助けが必要なら遠慮なくいってくださいね。……きっとですよ」
「はい、お嬢様……お言葉、うれしゅうございます」
「ところで、バンの配下は何人くらいいらっしゃるの?」
「市井に溶け込んでいる者を除き、実働部隊という者ならば、三十人ほどでございます」
「さ、さんじゅうにん」
マヒワは眼を丸く見開いた。
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