17/31
前へ
/220ページ
次へ
「はい。特に取引量の多いところから、現地に出向いて調べておりました」 「でも、おじさんは毎日帰ってきてたから、そんなに遠くないところですよね」 「ご推察のとおりです。取引先は近接する都市国家タカワンを拠点とする商会なのですが、薬包紙が運ばれていた先は、この街の郊外にある、いまは使われていない砦でした」  それを聞いたマヒワは、「じゃあ、あたしも行ってみます」といまから行きそうな勢いをみせた。 「お待ちください、お嬢様!」  慌ててスイリンが、マヒワの腕を掴んで止めた。 「バンが砦に侵入したのか、いまはわかりません。判ったことがあれば必ずお知らせしますから、それまでは修行にご専念ください」  ――う、うう……。  闇雲に動いても無駄なことは、マヒワも理解している。  ただ、このような状況で修行に専念できるとは、少しも思えなかった。  マヒワはもどかしさでこぶしをきつく握りしめる。  マヒワの苦悶の表情をみて、スイリンが意を決して言った。 「お嬢様。わたくしは――バンの娘でございます」  二人の目が合った。  ――おじさんの安否をいちばん案じているのは、スイリンさんだ。 「……わかりました。スイリンさんも無理をしないでください。助けが必要なら遠慮なくいってくださいね。……きっとですよ」 「はい、お嬢様……お言葉、うれしゅうございます」 「ところで、バンの配下は何人くらいいらっしゃるの?」 「市井に溶け込んでいる者を除き、実働部隊という者ならば、三十人ほどでございます」 「さ、さんじゅうにん」  マヒワは眼を丸く見開いた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加