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「いまま移動してきた先々でやり残したことがあれば、ひと班ずつ残してきておりますので、いまは、十五人ほどがバンの捜索にあたっております」  ――弟子ぞろぞろの剣聖さんに、よい印象をもっていなかったけれど、あたし自身がいつも三十人近くを引き連れていたのか……。  とマヒワが思って渋い顔をしていたのを、スイリンは、少ない人数で不安に思われている、と勘違いしたようで、 「あの……、人数が不足するようでしたら、呼び戻しますので、ご懸念には及びません」  と、マヒワの不安を払しょくするように、慌てていい添える。  スイリンの勘違いを訂正しても仕方がないので、 「ごめんなさい。おとなしくしています。スイリンさんは、おじさんの捜索に集中してください」  と、捜索は専門家に任せ、マヒワはバンの無事を祈るしかない。 「ありがとうございます、お嬢様」 「明日は郊外の孤児院に行く予定です。あたしのほうは守っていただかなくても大丈夫ですから、おじさんの捜索に集中してください」  そうはいっても、マヒワの見えないところで、何人かが見守っているに違いない。 「恐れ入ります。――では、何かわかりましたらお知らせいたします」 「そうそう。こちらから連絡を取りたいときは、どうしたらいいのですか?」 「赤い布きれを窓の外や戸口の外に結んでおいてください。すぐには無理かもしれませんが、必ずお伺いします……」  とりあえず、いまのところ、マヒワにできることはないので、部屋に戻ることにした。  マヒワが宿屋の裏口で振り向くと、スイリンの姿はもうなかった。
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