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 気になるマヒワねぇさんを話題にするきっかけがでたので、子どもたちはマヒワを取り囲み質問をあびせる。  マヒワとしては、ライラの師匠になったつもりはなかったが、この展開では師匠にならざるを得まい。  しかも、子どもたちが「ししょーだ、ししょーだ」と囃し立てる様子をみると、ひょっとしたら、この子たち全員の師匠になったのではあるまいか。  ライラに助けを求めようとして、顔を向けたら、きょうだいたちに得意満面だ。  もはや「師匠ではない」といえる状況でなかった。 「ししょー、おなかすいたー」  と、ライラの二つ年下のアッシュがいう。  ――絶対、師匠をお手伝いさんと同列に思っているに違いない。  とはいえ、マヒワもお腹がすいていたので、調理場を借りて、手早く料理を作ることにした。  きょうだいたちが手分けして、てきぱきと手伝ってくれるのをみると、普段からこうなのだろう。  食事をしている間も賑やかだ。  ――けっして裕福じゃないけれど、それでもここには幸せがある。  マヒワの頬が自然と緩む。  食事の後片付けを子どもたちにまかせて、マヒワはテンの世話に行った。  菜園には害獣よけの柵があり、テンも作物を食べる心配はなさそうなので、手綱を解いて周辺の草を食ませる。  テンは昔からマヒワの口笛の届く範囲から外れることがめったにない。  いつも五感を使ってマヒワを追いかけている。  そう思うと、テンもあたしの見守り役ね。  ――あの人たちは、いまこのときも、あたしのことを見守ってくれているのかな?
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