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 もちろん、スイリンたちの動きは伏せている。 「それでですね、薬包紙のこととか、砦のこととか、お気づきのことがありませんか?」  マヒワが頼ってきてくれたのだから、何とか力になろうと、弟子たちは頭を突き合わせ、何やら話し合いを始めた。  奥から書類を引っ張ってきて、ああだこうだとしばらく議論していたが、話がまとまったのか、再びマヒワの前に整列した。 「あの砦は、岩塩戦争のときに西域諸国の監視のために設けられたもので、戦争が終わってからは放置されているはずです」 「つまり、いまは誰もいない、と」 「まぁ、われわれの管轄外ですし、あらためて近づいて確認したこともないので、人がいるかいないかは何とも言えませんが、少なくとも、砦の役目として使われていないことは確かです」 「ですから、薬包紙があの砦に運ばれることはありません」 「積み荷を改めて薬包紙だけが大量にあった、という記憶も印象もございません」 「記録も見ましたが、薬包紙と砦の関連を示すものは見当たりませんでした」 「結論として、薬包紙と砦との関係は我々には判りません」  弟子たちが個々に報告してくれるが、その内容は芳しくない。 「そうですか、いろいろお調べ頂いて、ありがとうございました……」  といって、マヒワはぺこりと頭を下げた。  弟子たちは、マヒワの力になれないことが、とても残念そうだった。  もう一度、何か気づくことはないか、弟子たちは記憶をたどった。 「――あっ!」 「えっ、何ですか! 何かお気づきのことでも?」  マヒワが期待に瞳を輝かせ、声を上げた弟子に顔を近づけた。
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