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 それでも、マヒワは穏やかで優しい言葉をかけてくれるマガン老師のことが好きになり、こんどは本当の笑顔になった。 「ほほぅ、よい笑顔だ。よしよし」 「先ほどは、わたしの剣を見て、自分も剣士になりたいと申しておりました。娘なのに剣を持ちたいとは……わたしと同じ剣術バカの血が流れているのですかね」 「親子といえば、ティーシャ様も同じくらいのお歳だったか」 「王女様は、娘より二つお歳が上ですね」 「ということは、もう七歳におなりか。儂が王のお側に仕えておったころにお生まれになったのが、つい昨日のように思えるのに、月日の経つのは早いものよ」 「王女様は、穏やかで温和しい方ですが、とても利発であらせられます。あのお歳でひとを困らせたところを、お見かけしたことがございません」 「ご立派なのはわかるが、ご自分を抑え過ぎておられなければよいのだが……」 「言うべきことをはっきりと言われますが、あまりご自分を前に出されないことは確かですね。マヒワとは対照的です。マヒワは自分の感情に素直すぎて困ります」 「ふふふ、自分に素直なのはよいことではないか」  二人の目線が集まると、マヒワはどうして良いかわからず、隠れたくなった。もうしばららく話の種にされると思うと、泣き出したくもなる。  父に話題を変えてほしいと頼もうと、父の膝の上に手を置いて、耳元にささやこうとしたところに、また母の声が届いた。 「あなた、役宅から知らせが参っております。なんでも、火急の用事だとか。いかがなさいます?」 「わかった、こちらにお通ししてくれ」  イカルはそう言うと、膝に置かれたマヒワの手をとって、すまなそうにした。
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