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「いえ、そんなに期待しないでください。たいしたことじゃないですから」
マヒワの顔が思いもよらぬ近距離に迫ってきたからか、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、
「悪さをする奴らの立ち振る舞いを考えたら、直接アジトに立ち寄ったり、物を運んだりはしませんよね」
と話し出した。
「そりゃ、そうですよね。――ならば!」
とマヒワは、相手の気分を持ち上げるように手を指しだして、先を促す。
「――ならば、まずはどこか別の方向、例えば表向きはちゃんとした店とか、ただの家とかに寄って、何日か経ってから、その砦に向かうとか、考えられませんか?」
「いい考えだと思います。人も物も、そういう中継点を何カ所かかませれば、全く足どりを消せますね」
とマヒワが賛同した。
さらに別の弟子が意見を付け加えていく。
「同じ近づくなら、思いもしない方向から砦に入れば、さらにわからなくなります」
「砦はもともと入り口が少ないので、この街からは遠い方角の入り口とか」
「確かあの砦の門は、二か所だったはずだ」
「なら、北方に向いた門があやしいな」
「一度北に向かってから、戻ってきてるのか」
「なら、北に向かった積み荷も調べる必要があるな」
弟子たちはどんどん盛り上がっていく。
――そういえば、スイリンさんが、都市国家タカワンに関係する商会が砦に薬包紙を運んでいるとか、いっていたような……。
マヒワが宿屋の裏ではじめてスイリンと会ったときに聞かせてくれた、あの重要な情報に思い当たる。
――できれば、その商会の名称を知りたい。
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