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「たぶんですけれど、薬包紙を取り引きしていたということは、個人よりも商会の可能性が高いですよね」 「確かにそうですね」 「どこの商会がわかったら、教えてください」 「もちろんです。剣聖先生にも早く戻ってきていただかないと、我々も困ります。よろこんで協力いたしますよ」 「あたしも、もうしばらくこの街と郊外の孤児院とを往き来しますから、捕り物でもなんでも、お手伝いできることがあれば、おしゃってくださいね」 「いやいや、我々の捕り物に剣聖であるマヒワさんのお手伝いをいただくなんて、とんでもございません」  何で剣聖先生の手伝いはマルで、あたしの手伝いはバツなのだ、と思うところもあったが、相手が遠慮してるものと単純に考えておく。  そろそろ帰るというマヒワに、弟子たちはわざわざ詰め所から出てきて、相変わらずの横並びで、一斉に手を振ってのお見送り。  マヒワのほうも恐縮し、何度も振り返っては、お辞儀を返した。  今回、得られる情報は少なかったものの、つぎは期待できそうなので、マヒワの足取りは軽い。  ――近いうちにロウライからいちど離れて、どこかの中継点から砦に入る経路がないかを調べてみよう。  その間、剣聖先生が戻ってこなければ、子どもたちだけで孤児院に留守をさせることになるので、何とかしたい。  バンの捜索に注力しているスイリンたちに、孤児院の面倒を見てもらうわけにはいかないし、させたくない。  ――ならば、自分で何とかするしかない。  マヒワは、弓矢を揃えるために武具屋に向かう道すがら、そんなことばかりを考えていたが、ふと足が止まった。
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