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見覚えのある店の並びに視線を巡らすと、今朝出てきたばかりの宿屋が目に入った。
「だめもとで、お願いしてみよう」
そうつぶやくと、マヒワは宿屋の中に入っていった。
その後、ロウライの街を出たマヒワは二頭立ての馬車に乗っていた。
テンは後ろから馬車に付いてきている。
孤児院には約束通り、日暮れ前に戻ることができた。
馬車の音を聞きつけて、ライラが窓から顔を覗かせた。
ライラは、近づいてきた馬車にマヒワの姿を認めると、扉から駆け出してきた。
勢いそのままに、馬車を降りたマヒワに飛びついてくる。
マヒワがライラを抱き止めると、ライラもしっかりと腕をまわして、しばらく離れようとしなかった。
「ね、ちゃんと帰ってきたでしょ」
マヒワの声を聞いて、ライラの腕の力がやっと抜けた。
マヒワはライラと手を繋いで建物の中に入った。
建物の中に入ると、もうひとり子どもがしがみついてきた。
カチェだ。
マヒワはカチェを抱き上げると、そのまま一緒に椅子に座った。
「さぁ、君たち。今日いちにち何をしたのかを報告したまえ」
と、マヒワは子どもたち一人ひとりの元気な顔を確かめながらいった。
「はい、ししょー」
子どもたちは、一斉に手を上げて、口々に今日あった出来事や仕事の成果を自慢げに語りはじめた。
しばらく賑やかなやりとりをしていたが、突然、胸に違和感を感じて、くすぐったくなった。
マヒワが視線を下げると、カチェが乳房を小さな両手でつつんで、お乳を飲みたそうにしているではないか。
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