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 気づいたら、あたしは両腕を痛いくらい広げて、お母さんを庇っていた。  目の前には、烏の格好をした変なひとたちが並んでいた。  追い返そうと思って、ちからいっぱい、睨んだ。 「――だめよ、マヒワ。いけない、そんなこと……」  お母さんは、とても小さくて弱々しい声で、必死にあたしを止めようとしていた。  いちばん前にいたひとは、あたしをこわがって近づいてこなかった。  そしたら、そのひとを押しのけて、別のひとがあたしに迫ってきた。  あたしは怖くなって、ちょっとだけ目をつむった。  ひとの倒れる音がして、びっくりして目を開けたら、マガンおじちゃんがいた。  今度はマガンおじちゃんが、あたしとお母さんを庇ってくれた。 「さぁ、束になってかかってこい!」  マガンおじちゃんが大きな声をだした。  烏のひとが剣をマガンおじちゃんに突き出すと、折れて飛んでいくのが見えた――。  ――あたしの目の前で、棺が燃えている。  一つはお母さんの棺で、もう一つはお父さんの棺だ。  お母さんは、あれから二日後に死んじゃった。  死ぬ間際まで、あたしのことを心配してた。  お父さんの棺には、遺品という物が入っていたらしいけど、何が入っていたのか、覚えていない。  むしろ、なにもなかったように思う。  棺をのせた祭壇に火をつけたのは、あたしだ。  マガンおじちゃんに手伝ってもらった。  みんなで鎮魂の唄を歌った。  燃える棺から、火の粉が舞い上がり、夜空に舞い上がっていった。  火の粉は、お母さんの魂と、お父さんの魂といっしょに、舞い上がっていった――  
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