6/10
前へ
/220ページ
次へ
「おお、とてもいい考えね! 宿屋の人にもきっと喜んでもらえるわ」  とマヒワは本気で感心する。  ――くやしいけれど、あたしは、思いつかなかった。 「ちょうどいま、ほとんどのお野菜を収穫できるから、わたしもいいと思います」  とライラ。 「収穫できないヤツは、引っこ抜いて、堆肥にする?」  と、これはアッシュ。  ――この子たち、すごいぞ。 「みんな、すばらしい。それでいきましょう。では、作業は明日の朝いちばんから始めようね」  ――自分ひとりで背負い込む必要なんてなかったんだ。  先生の教育の賜物なのか、子どもたちの資質がすごいのか、とにかく感心ばかりさせられる。 「それでは、明日に備えて早く寝ましょう!」  といって、みんなを寝かしつけると、マヒワも早々に床についた。  ――翌朝。  子どもたちは手分けして、各々の作業にとりかかった。  ウルマが収穫した野菜を、ライラが束ねたり籠に入れたりしていった。  カチェは、アッシュの引っこ抜いた野菜を堆肥にする場所へと運んでいた。  みんなが手分けして手際よく作業を進めたので、思ったより早く出発できそうだった。  マヒワはできるだけ建物の中を整然と片付けていった。  万が一、子どもたちが宿屋に泊まっている間に先生が戻ってきたら、子どもたちがいなくても、建屋内が整然としていることで、襲われたのではないと判るだろう。  そうすれば、門衛に様子を尋ねに行くはず。  門衛から宿屋へ連絡をもらう手筈は整えていた。  先生宛ての書置きも考えたが、悪意を持った者に知られたくないので、やめておいた。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加