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「マヒワ、またお母さんのところに行っておいで。お父さんはとても大事な話を聞かなきゃならない」 「お父さん、わたしとお話しすることは大事じゃないの?」  マヒワの泣き出しそうな顔を見て、どう説明したものか、とイカルは困り果てた顔をした。 「急ぎの大事でも起こったかな。いや、長居をした……儂も帰るとするか」  マガンは残っていたお茶を飲み干して、腰を上げた。 「マヒワちゃん、儂を玄関まで送ってもらえるかい」  マガンが本当に一緒に案内してほしそうに手を差し出すものだから、マヒワは自然にその手を握ってしまった。 「老師、どうもすみません」  助かりました、という言葉を飲み込んだイカルに、マガンは軽く頷いて見せた。  マヒワは、丘の上のあずまやから屋敷までの小径を、今度はマガンの手をつないで歩いた。  マヒワはマガンに歩調を合わせることに集中していたので気づかなかったが、庭木の植え込みの陰に、男がひとり跪いていた。  客というのはこの男のようで、マヒワとマガンが通りやすいように、脇に控えていたものらしい。  マガンは通り過ぎるとき、男を射貫くような視線を投げた。  男はマガンと一瞬視線を合わせたのち、縮こまるように頭を下げた。  屋敷までたどり着いたとき、マガンがちらりとあずまやに視線を送ると、先ほどの男の話を聞き終えたイカルが、拳で円台を叩くのが見えた。
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