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 段取りよく進めたので、昼少し前に子どもたちを馬車に乗せて出発することができた。  道中も順調にいき、ロウライの宿に着くと、宿屋の主や従業員に子どもたちを紹介した。  思った通り、手土産の野菜はとても喜ばれた。  部屋にこもってボケっとしているわけにも行かず、全員でさっそく宿の手伝いを始めた。  マヒワも子どもたちに混じって洗い物や部屋の掃除をした。  最初はマヒワに恐縮していた宿屋の人たちも、自分たちの仕事が忙しくなってくると、そんなことは言っていられなくなったようで、遠慮なく指示が飛んできた。  飯どきには、宿屋の従業員に混じって、賄い食を食べた。  その日の終わりには、生活の変化もあって、子どもたちは疲れたようで、あっという間に寝入ってしまった。  こうして、子どもたちと宿屋の手伝いをして、まる一日が過ぎた。  翌日の昼を過ぎても、いまだにスイリンからの報告がなかった。  さすがにマヒワは不安になって、宿屋の裏口のあたりに赤い布を括りつけた棒を挿した。  ――これでスイリンさんが現れなければ、自分ひとりで砦に行こう。  一方、子どもたちの順応性は高くて、各々の役割が早くも決まりだしていた。  この宿屋では客に提供する野菜を自分たちで作っていて、年長の子どもたちは菜園の作業を手伝っていた。  客の出迎えは、いつの間にかカチェが担当していた。  人見知りをしなくて、愛想がよいから、客の受けがすこぶるよい。  子どもたちが早々に自分たちの居場所を見つけてくれたので、マヒワは安堵した。  何よりも、宿の人たちと一緒であることは、孤児院に子どもたちだけで留守番させるより遙かに安心だった。
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