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 ひょっとするとスイリンはマヒワを主筋と決めているから、「立て」という命令と捉えたのかもしれなかった。  マヒワとしては、もっと気を楽にして接してほしいが、スイリンには主従関係を崩す気配がなさそうだった。 「スイリンさんからの連絡がなかったということは、おじさんの行方はまだわからないということですか?」 「はい、いろいろ掴めたのですが、結論としては推測の域を出ませんので、報告を控えておりました」 「ところで、ここ数日も、あたしには、護衛さんたちが付いていたのですか?」 「はい、もちろんでございます」  ――すごい! 探してみたけれど、全然わからなかったぞ。  という動揺を気づかれないように、マヒワは、 「どうか、その方たちも、おじさんの捜索のほうに当ててください」  とすましていった。 「お心遣い感謝いたします。ですが、それではお嬢様のご連絡のおしるしを見落としてしまいます」  ――うぐぐ、確かに……。 「では、あたしがスイリンさんたちと行動を共にするのはどうですか? そうすれば、護衛を付けてもらわなくてもよくなります」 「それでは、お嬢様の廻国修行に障ります」 「いえ、いまは廻国修行どころではなくなりました」 「と、申しますと」  スイリンは、マヒワの身の回りに起きた出来事の逐一を把握している訳ではないようだった。  ――まあ、逐一知られているのも気持ち悪いしね……。 「あたしが街外れの孤児院に行ってたことはご存じですよね」 「はい」 「それなら、いままでの経過とあたしの掴んだ情報を伝えます」
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