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 とマヒワはいって、孤児院であった誘拐事件や薬草と薬包紙と砦の関連性についてスイリンに語った。 「ということで、師匠たるあたしが可愛い弟子たちを見捨てるわけにはまいりません」 「……」  スイリンが怪訝な表情をした。マヒワの話の意図が読めないようだった。 「バンおじさんのことはスイリンさんたちにお任せしますが、あたしとしては、そのお兄ちゃんたちと剣聖先生を探してあげないといけないのです!」  と続けたところで、スイリンの口元が緩み、微笑みに変わった。  スイリンの口から思わず言葉が漏れた。 「ほんとうに……どうして、お嬢様は……」  ――誰をも見捨てることなく、寄り添えるのですか?  スイリンはあふれてくる涙をこらえるので精一杯だった。 「……お嬢様は。お嬢様は、本当にお優しい方ですね」  スイリンが一生マヒワに仕えようと決心した瞬間だった。
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