十一

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 とマヒワの独り言にも、スイリンは真面目に答える。 「頻度はわかりますか? 砦の中に住人がいて、薬を作っているとなれば、一日で相当のお水を使いますよね」  ――つぎの運び込みがいつ頃になるかは、門衛さんたちに記録を調べてもらえれば推測できるかもしれない。  マヒワは、砦に入る手段があるとすれば、物資の運び込みに紛れるのが一番だと考えた。 「残念ながら、昨日、砦に向かう荷車があったばかりです」  スイリンは、マヒワが口を開く前に言った。 「バンが行方不明になってから砦の出入りに注目しだしましたので、日にちが浅く、頻度については確かなことがわかりません」  と言外に、「あぶないことはおやめください」と含ませているようだ。  スイリンとしては、マヒワを砦に行かせたくないのはよく判る。  マヒワは、自分の考えが読まれたことが残念だった。  剣術の仕合なら、自分の攻撃の手の内を相手に読まれたに等しい。  マヒワは、くやしくて、顎を少し突き出して、歯をぎりぎりさせた。 「お嬢様、お顔が変になってございます」  というスイリンから、頑なさが多少和らいだようだ。  マヒワは両手のひらで頬をぺちぺちと叩きながら、「とりあえず、夜が明けたら、砦のほうに行ってみます。遠くから眺めるだけですから、心配しないでください」と言った。 「かしこまりました。ですが、わたくしもお供します」 「……しかたないですね」  マヒワとしては、いまは砦に近づけるだけでもよしとする。 「では、待ち合わせはどうしましょ?」  スイリンと一緒に部屋に戻ることも考えたが、
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