十一

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「お嬢様はご都合のよい時間と方法で、砦にお向かいください」  と、スイリンは、ここでもあっさりしたものだ。 「わたくしは、適当な頃合いで合流いたします」  マヒワもその方が楽だと思い、承知して別れた。  明朝――  子どもたちはまだ寝ていたので、マヒワは書き置きをして宿屋を出た。  テンに騎乗して、砦へ向かう。  砦の方面へは、整備された路を使うなら都市城郭の北門から出るのだが、牧草地を横切るなら西門からのほうが少し早い。  マヒワが西門に着くと、まだ時間が早いので閉まっていたが、門衛に砦へ調査に行くことを伝えると開けてくれた。  マヒワが外に出て振り返ると、門衛の心配そうな顔が目に入った。 「今日中には必ず帰りますからそんなに心配しないでください。時間外なのに門を開けて下さって、本当にありがとうございます」  といって、マヒワは頭を下げた。  門衛も、「お気をつけて」といって、あわてて何度も頭を下げる。 「帰りに詰め所によって、今日の様子を報告しますね」  マヒワが門を出ると、すぐに門が閉じられた。  門の軋む音を背後に聞きながら、マヒワはテンを駆けさせた。  牧草地を進んでいくと、雑木林があった。  雑木林は砦のある丘の裾野にあり、南から東の方へ扇形に広がっていた。  ロウライの北門から伸びている街道より分かれる小径(こみち)は、この雑木林の北側を大きく迂回して砦につながっている。  マヒワは、砦から見られないように雑木林に近づくと、テンから降りて、歩いて雑木林の中に入った。  足下には落ち葉が積もっていた。  落ち葉が乾燥しているので、足で踏むと結構音がする。
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