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   〇〇〇  ――この一か月後の祭祀当日、羅秦国を震撼させた『宗廟(そうびょう)事変』が起こる。  歴代の王の霊廟を会場とした祭祀の式典で王族の待機していた幕舎を、あろうことか警備隊長とその部下が襲った。  このとき、王は湖中の宗廟にひとりで向かっていたという。  同時に式典の警備のために設置されていた本部と複数の待機所を、謎の集団が襲い、警備と治安機能を麻痺させることで、混乱をさらに長引かせた。  王が意識不明の重態、王女は行方不明、カルーラ王妃をはじめとする王族は皆殺しという未曾有の騒乱のなかで、王の護衛に当たっていたイカルもまた行方不明となった。  王を襲撃者から救うために単身で戦闘に及んだという報があったものの、続報はなく、その後の行方も生死も判らない。  さらに、このとき襲撃者たちは、私邸にいたマヒワと母のルリも襲っていた。  マガンが私邸に駆けつけ、二人を救出したが、ルリは二日後に亡くなった。  孤児となったマヒワは、マガンと妻のアッカに育てられることになった。  マヒワがマガンの養女として共に生活を始めて、二週間が過ぎようとしていた。  両親を失ったマヒワは、食事を摂るとき以外、ほとんど部屋にこもったきりだった。  父と母と過ごした日々を思い出し、泣いてばかりいた。  さすがにマガンとアッカも心配になったが、二人は今まで子宝に恵まれず、部屋にこもりっきりのマヒワと、どのように接すればよいのか、正直なところわからないでいた。
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