十一

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「いや、マヒワさん、礼には及ばぬ」  ガラムは座っていた腰を少し上げて、マヒワの礼にお辞儀で応じた。 「それにしても、心配なことですなぁ。お供の方が戻ってこないそうじゃありませんか」 「師範にまでご心配をおかけして申し訳ございません。それに、剣聖先生も未だに帰ってこられないようで……」 「孤児院の子どもたちをお引き受けなさって、宿屋にお預けなさったこと、いやぁ、マヒワさんの行動力の素晴らしさに感服いたします」  ガラムの言い方には少しもトゲが無く、素直に感心しているようなので、マヒワとしてはくすぐったくて仕方がない。 「いやぁ、どうも。恥ずかしいので、そんなに褒めないでください」  マヒワは照れ隠しに頭の後ろを掻く。 「それで、今朝方の下見で何かおわかりになりましたか?」  というガラムの問いかけに、「砦には近づきにくいことだけ、わかりました」と舌をチロリと出して答えた。  それを見ていた門衛たち、いや、棒術の弟子たちが「いい……」と漏らしたようだが、マヒワは聞こえなかったことにする。 「あの砦は、もともと見張り台ですから、見通しがよいのは当然ですわい」 「門は少ないし、雑木林からは離れているし、接近するだけでも想像以上の難易度です」 「して、剣聖先生やマヒワさんのお供の方だが、本当にその砦に絡んで行方不明になってしまわれたのかな?」 「それについては、薬包紙の動きを調べてます。お弟子さんたちにもご協力をいただいて、本当に助かっています」  マヒワの言葉に、ガラムが弟子たちを見渡す。 「北門の連中に、積み荷の記録を見せてくれるよう、頼みに行きました」  弟子の一人が言った。
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