十一

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「剣聖先生と二人の孤児、そしてあたしの供の者がその砦にいるのではないか、というのは消去法からの推察です」 「つまり、街中や周辺地域を調べても、発見できなかったということだね」 「そうなんです。とはいえ、砦に絶対いるとも言い切れないので、あたしが潜入することにしました」  と、マヒワはさらりと言って聞き流してもらおうとしたが、案の定、「ええっ! それは危険です!」と弟子たちの口が揃った。  ガラムも難しい顔をしている。 「門衛は門から離れることはできませんから、侵入のときには残念ながら、ちからになれませんわい」  という師範の言葉に、弟子たちは無念そうに唇をかみしめた。 「無理なことを考えていても仕方がない……」  とガラムは口の中でつぶやきつつ、「まぁ、入れたとして、脱出はできるのかい?」と話を先に進めた。 「それほど大きくない砦ですし、闇夜に紛れて魔香を製造しているという証拠だけでも手に入れてこようかと……」 「その証拠をもって、治安部隊か軍を動かそうとしていなさる?」  ガラムは、正気か、というような顔をする。 「魔香を持って帰ってくるだけじゃ、だめですかね……」  図星を指されて、「軍部を動かすには証拠として足りないかな」とマヒワの声は弱々しい。 「うーむ。まぁ、いまは使われていないとはいえ、軍の施設を占拠している時点で、軍は動ける。孤児院での子どもの誘拐がその砦と関係していれば、治安部隊も出動できる」  ガラムはしばらく空中を睨んで、 「魔香を無理に持って帰らなくても、砦が占拠されていることがわかれば、とりあえず軍に動いてもらうことはできるな……」  とつぶやいた。
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