十一

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「でも、本当に軍が動いてくれますでしょうか?」とマヒワが確認する。 「それは、諜報部隊の者が報告すれば信憑性は十分でしょう。あとは軍が自ら動く必然性を判断してくれれば、しめたものなのだが……」 「やっぱり、難しそうですか……」 「いや、簡単でしょう。あいつなら、マヒワさんのことであれば喜んで協力しますよ。むしろ、公私混同のほうで危険かもしれませんなぁ」  簡単と聞いて、安堵する一方で、「あいつ」という気になる言葉。 「あ、あいつ?」  と思わず聞き返した。 「おや? あいつ、自己紹介してませんでしたか? うちの師範代ですが……」 「ああ、しはんだい。え、師範代が、どして?」  とかなり動揺するマヒワ。 「あいつがこの街に駐屯している軍団の長、つまり将軍なんですわ」 「ええっ! そんな偉いさんだったんですかっ! とんだ失礼をいたしましたー!」  とマヒワは訳もなく慌てていた。  ――どうりで、稽古では、ほかのお弟子さんたちに対してやたらと偉そうにして、門衛の詰め所では一度も見かけないわけだ。  ――槍の仕合の時に、本当の隊列はもっと横に長い、などといったのも、本職の軍隊では、棒じゃなくて、槍を遣うからだったのか……。  いずれにしても、マヒワは現職の将軍をいじり回して、ぶっ飛ばしたことになる。 「まぁ、まぁ。御光流もそうでしょうけれど、武術の世界では、世間の肩書きは関係ありませんから、どうぞ、お気になさらず」  と、ガラムが気休め程度のことを言ってくれたが、「今度お目にかかったら、しっかりと失礼をお詫び申し上げよう」とマヒワは心に誓った。 「それでじゃな、マヒワさん――」
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