十一

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 と続けてガラムが言うには、砦の占拠されているのを証明することが難しいのだ、と。  単に、砦に人が居るだけでは、占拠されているとは断定できない。  たまたま休んでいただけだ、と相手にいわれればそれまでだ。 「まぁ、砦に入ろうとして拒絶されたら、占拠されていると言えるじゃろ」 「でも、あの雰囲気では近づいただけで弓矢で射られますよ」 「証明する前に、殺されてしまうか」  といって、ガラムはフフと笑った。 「師範、笑い事ではありません!」 「いやぁ、あいつなら、射られても死なんよ」 「えっ! 師範代に行ってもらうつもりだったんですか?」 「なんじゃ、違うのかい?」 「だって、将軍さまですよ! そんな軽はずみなことできるわけないじゃないですか!」 「マヒワさんの頼みなら、喜んで行きよるで」  というガラムの言葉に、周りの弟子たちが一斉に頷く。 「いやいや、行くのはあたしのつもりです!」  今度は一斉に首を振る。 「そんなところに一人でノコノコ出て行ったら、格好の標的にしかならんがな」 「いえ、いえ、あたしも、そこまでアホじゃありませんから! きちんと考えてますっ!」  といって、マヒワは頬を膨らませた。  また弟子たちから、「いい」という声が聞こえたので、今度は鋭い一瞥を放った。  マヒワの視線に射貫かれて、弟子たちは直立不動になる。 「ふむ。軍をつかうのが一番手っ取り早いのに、ほかに手立てがあると」 「仮に、砦の中に連れ込まれた人たちが本当にいたとして、軍が突然現れたら、真っ先に殺されるか、逃亡のための人質にされてしまいますよ」 「……確かに一理あるな」
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