十一

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   〇〇〇  門衛の詰め所での話し合いが終わると、マヒワはいったん宿に戻った。  宿屋の戸口に立つと、カチェがマヒワの足にしがみついてきた。  よほどうれしいのだろう、しがみついたまま離れようとしない。  仕方がないので、カチェを抱き上げて、そのまま奥に進む。  ほかの子どもたちも、それぞれの場所で見事に己の役割を果たしていた。 「お帰りなさい、ししょー」  と畑で水やりをしていた、ライラとアッシュがマヒワを出迎えた。 「あれ? ウルマくんは?」  ひとりだけ姿が見当たらない。 「ウルマは、向かいの料理店を手伝ってます」とアッシュ。 「お野菜を持って行ったら、あっちも人手不足だからって、お願いされたみたい」 「ああ、ライラちゃんと初めて会った、あのお店ね」  ずいぶん前のように思えるが、たった四日前のことだった。  時が経ったといえば、作戦会議に没頭していたら、いつの間にか昼はとっくに過ぎていた。  マヒワは起きてから何も食べていないことに気づいて、急に激しい空腹感に襲われる。 「このあと、行ってみるね」  マヒワは抱いていたカチェを降ろして、ライラに預けた。  頑張ってね、と励ましの言葉を子どもたちに掛けて、マヒワは自分の部屋に戻った。  ガラムとの打ち合わせを実行するにあたって、足りない物を調べていく。  忘れないよう、紙に書き付けたあと、食事をするために向かい側の店に行った。  実は、マヒワはこの店でスイリンと待ち合わせていたのだ。  もちろん、砦に潜入する打ち合わせをするためである。
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