十一

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 朝に別れた後、スイリンはいったん仲間の元に戻って、いま動ける人数のほか、用意できる武器や装備を確認してくる手筈になっていた。  戸口からなかを覗くと、料理店は満席だった。  スイリンは、表通りのよく見える窓際の席にいた。  マヒワの近づいてくるのも確認していたようで、マヒワが入るとすぐに手を上げて合図を送ってきた。  マヒワは席に近づきながら、店内を見渡す。  手伝っているというウルマの姿を探してみたが、見当たらなかった。 「お嬢様、誰かをお探しですか?」  マヒワが向かい側の席に着くなり、スイリンが問いかけた。 「ええ、孤児院の子どもがひとり、こちらを手伝っているらしいの」 「お嬢様らしいですね」  スイリンが口元をほころばせる。 「なにが?」 「いえ、何でもありません」  マヒワは、スイリンのいう、「らしい」が何なのかを考えてみるが、思い浮かばない。  そうこうするうちに、料理が出てきた。 「先に頼んでおきました」 「うわっ、すごい! どうしてあたしの食べたいものがわかったの?」 「お嬢様の考えていることは、何でもわかるんです」 「それって、うれしいけれど、ちょっと気持ち悪いかも……」 「ふふ、どうぞお気になさらず。さぁ、冷めないうちに頂きましょう」  スイリンは、初めて会ったときには見せなかった和やかな表情で、マヒワの前に座っていた。  二人はしばらく無言で食べていたが、お腹が落ち着いてくると、この街に戻ってからお互い確認できたことを話し始めた。 「それでは、ガラム師範が将軍のところに行かれて、お話ししてくださるのですか?」
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