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十二
街で別れたマヒワとスイリンは、夕方近くに再び雑木林に集まった。
マヒワは、雑木林の遙か手前でテンを降りると、雑木林に近づいた。
マヒワの服装は、このあたりで出会ったならば、散歩中と言えるくらい、ごく平凡な格好だった。
マヒワは剣の代わりに木剣を布に包んで肩から斜めに背負っている。
弁当や手回り品を包んでいるようにしているので、武器が入っているようには見えない。
加えて今回は、二種類の矢筒と長弓を携えていた。
雑木林に入ってすぐのところに、スイリンのほか、六人の諜報部隊の隊員がいた。
若者から壮年までの、いかにも仕事のできそうな者たちだった。
全員が深緑の服装をしており、雑木林の影に溶け込むような色合いだ。
マヒワの姿を認めると、スイリンを含む全員が片膝をついて礼をした。
「あわわ、やめてください。お膝が汚れますよ。みなさん、ほら、たって、立って」
スイリンが先に話していたのだろう、マヒワの噂通りの調子に、隊員たちは顔を見合わせて苦笑いをする。
マヒワがスイリンの手を取って立たせるものだから、ほかの人たちもそれに習って立ち上がった。
「準備はいいですか?」
「はい。油を入れた袋を木にぶら下げています。また、その下周辺には燃えやすいように枯れ葉の上に油をまいておきました。見張り台のようすを伺いながら作業しましたが、気づかれた様子はございません」
「風の向きも朝の時と同じですね」
「ちょうど砦の方に吹いています。夜遅くまで風向きは変わらないでしょう」
風向きは、朝方と同じように、雑木林から砦の方向に吹いていた。
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