十二

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 そのとき、「あのぅ……」といって一番若そうな男が手を上げた。 「作業していて思ったんですが、砦のやつら、絶対出てきますかね」  男はスイリンに向かって問いかけてはいるが、その実はマヒワに尋ねているようだ。 「いきなり目の前の雑木林が燃えたのを見て、怪しさのほうが勝ったら、火を消しに出てこないで、逆に守りを堅くするかもしれませんよ」  男の言葉に、マヒワはひとつ頷くと、 「――そうですね。でも、雑木林に火をつけるのは、砦の人たちをいぶり出すのが目的じゃありません」  マヒワの応えに、スイリン以外の全員が驚いた。  自然とマヒワのつぎの言葉を待つ。 「このあたりに駐屯している軍に、出張ってもらいやすいようにするためです」  隊員たち全員が、「わかりません」という顔つきになっている。 「実は、軍にはあらかじめ、このあたりに演習に出てきてもらっています。そこで、雑木林の方から煙が上がっているのを発見するという段取りです」 「ははーん。それで砦の方が怪しいとみて、軍が調査に入ると」 「そうです」 「砦が軍を拒めば、そのまま力押しで入る訳ですね」 「あたしは、その混乱に乗じて、砦の警戒の緩んだ隙に侵入するという作戦です。もちろん、消火活動に出てきたら、それに混ざって入るつもりです」  というマヒワの言葉のあとにスイリンが、「わたくしたちの仕事は、お嬢様の侵入と脱出を支援することと、侵入し易いよう、炎と煙の勢いを調整することだ」と補足した。 「――承知しました」  隊員たちが頷くと、スイリンが片手をあげて散開させた。  マヒワも雑木林からできるだけ遠くに移動を始めた。
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