十二

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 砦から見つかることなく、雑木林の一番遠くの仕掛けが見えるところまで草原を横切って足を運ぶ。  しばらく行っては後ろを振り向くことを繰り返して、雑木林のなかに的を確認した。  たしかに油の入った袋の束が等間隔にぶら下がっていた。  マヒワは姿勢の安定する場所を探し、風向きをよむ。  いい具合に追い風なので、飛距離は伸びそうだった。  長弓の射程距離を考えるともう少し遠くまで行けるのだが、いまは距離を確保しつつ確実に当てられる方を選ぶ。  マヒワは用意した矢筒のうち火矢の方を取り出した。  矢の先には油をしみこませた布が巻いてあった。  背負っていた荷物から、火をつける道具と着火剤を取り出すと、種火を作った。  マヒワは一本目の矢に火をつけると、長弓の弦にあてがい、引き絞った。  静寂の感覚の中で矢の軌道が鮮明になる。  マヒワが番えていた力を放った。  火矢が的に吸い込まれるように飛んでいく。  ――よし!  火矢は的を大きく揺らし、油の入った袋に燃え移った。  袋からこぼれ出た油は、炎の滴となって地面に降り注ぐ。  マヒワは早くもつぎの火矢を番えていた。  放つ。  また番える。  ひと調子の流れる動作で、つぎつぎと的を射た。  油の入った袋の一部は炎をまき散らしながら四散し、一部は大きな炎の塊となって地面に落下していった。  最初に当たったところの地面からは、炎と煙が立ち上がっていた。  立木に燃え移り始めている。  風は白煙を砦の方向へ運んでいく。  ――狙いどおりね。  マヒワは念を入れて、袋の落下した周辺に、残りの火矢のすべてを射た。
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