十二

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 水桶を持った人や土を掘る道具を持った人たちが作業にかかろうとしていた。  水桶で迫ってくる炎を消す一方で、その後方では、土を掘って草にかぶせていく。  ――動き出した。もう待っていられない。  マヒワは、弓と矢筒をその場に置き、砦から出てきた人たちに近づいていった。弓と矢は、スイリンが回収してくれる段取りになっていた。 「ひやぁー、大変ですね! あたしも、お手伝いしまーす!」  マヒワはいかにも街道筋から火災を発見したふうを装って、手足をばたつかせて駆け寄った。  手近な人の持っていた桶を強引に奪うと、炎に近づき水をかけた。  すぐに向きを変えて、再び列に近づくと、中継している人から桶をもぎ取って、代わりに空の桶を押しつけた。  水の入った桶を抱えて燃えている方に突進していく。  何度か繰り返していると、マヒワの前にからだの大きい男が立ちはだかった。  マヒワの背丈は相手の胸にも届いていない。  大男は、袖と裾を絞った灰色のつなぎを着て、革製の胸当てなど、軽装の防具で身を固めていた。  砦の戦闘員のようだった。  臨時で雇われた傭兵なのかもしれない。 「おい! 突然現れたと思ったら、何のまねだ!」 「……へっ? 火を消すお手伝いをしているんですけれど。わかりませんか?」  マヒワは、我ながら、神経を逆なでするような見事な口ぶりだと思った。 「ふざけるな! 人手なら足りておるわ!」  案の定、大男は瞬間沸騰した。 「街道を歩いてたら、煙が見えたし、火事だと思ったから、急いできたのに! なによ、その言い方!」
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