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消火活動の周辺で鬼ごっこをやられたせいで、火を消すどころか、いまや完全に炎と煙で包まれていた。
消火活動に勤しんでいた砦の者たちも、いい加減腹が立ったのか、走ってくるマヒワの動きを、人垣を作って止めた。
「ほうれ、観念しろ!」
振り向いたマヒワに、舌なめずりする大男が迫る。
マヒワを鷲掴みにしようと、ごつい手のひらが伸びてきた。
マヒワが反撃しようと腰を沈めた瞬間、
「コラァー! 責任者は誰じゃーッ!」
大音声の一喝があたりに響いた。
同時に、
「軍だーっ! 砦に戻れーっ!」
現場責任者と思われる人物の怒鳴り声が重なった。
「早くしろーっ! 消火はもういいーっ!」
「もどれーっ!」
「てったーい!」
方々で叫ばれる命令に、水をかけていたほうも、穴を掘っていたほうも、われ先に砦へと退き始めた。
マヒワを囲んでいた者たちもいなくなった。
大男が周囲の叫び声につられて、マヒワから視線をそらした。
その隙を逃がすようなマヒワではない。
マヒワは、腰を沈めて大地を踏みしめると、全身の力を右肘に載せて、大男の肋骨下の急所に思いっきり叩き込んだ。
大男は、蛙が潰れたような音を口から漏らして、崩れ落ち、地面に伸びた。
マヒワは、大男を介抱するかのように両脇に腕を差し込んで、
「すみませーん! 人が倒れてまーす! どなたか手伝ってくださーい!」
と逃げていく人たちに声をかけた。
マヒワは周りに声をかけながら、大男を引きずり起こす。
――お、重もっ!
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