十二

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 ふらつきながらも、大男の身体を引きずっていると、それに気づいた男たちが四人ばかり、親切にも集まってきてくれて、大男を担ぎ上げた。 「ありがとうございます。助かりました」  とマヒワがお礼を言うと、「いや、いや、なんのこれしき」と照れを隠して、張り切って運んでいく。  男たちの張り切りようが半端ないので、マヒワはもはや指を添えているだけだ。  その状態で煙に巻き込まれないよう、移動していると、「こらーっ! またんかーっ!」との怒鳴り声。  軍隊を率いる将校らしき人物とその後続部隊が、マヒワのところに迫ってきた。  マヒワが振り向くと、怒鳴りながら迫り来る相手と目が合った。  何のことはない、将軍である師範代が直々のお出ましである。 「おーっ! まひぃ……」  慌てて、マヒワは口に手を当て、首を振って、「しゃべるな」の身振り手振り。  師範代も気づいて、慌てて口に手を当てる。  ――バカ! くちに手を当てるなー!  こんどは、「あっちに行って」の身振りをする。  師範代は不器用に小刻みに首を縦に振ると、急に方向を変えて、マヒワから遠ざかっていった。 「こらーっ! そこだ! まてーっ! またんかーっ!」  と、別の集団を追いかけ始めた。  その姿にマヒワは冷めた視線を送る。  開かれた目は半眼だ。  ――将軍、演技が下手なのにもほどがあります……。  マヒワは周りを見るが、幸い、みんなは大男を運ぶのに必死で、先ほどのやりとりを見た者はいないようだった。  マヒワも砦に紛れ込むことに集中する。  逃げていく先になる砦の門は煙で包まれていてよく見えない。
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