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大男の手足を寝台に縛り付けようかとも思ったが、縛る時間がもったいないのと、意識が戻ったところで害はないと思い、そのままにしておいた。
さっそく医務室を抜け出して、あたりを見渡す。
建物の外では、かなりの騒動になっているようだが、建物の中は静かなものだ。
足音を忍ばせ、ほかの部屋も見て廻る。
この階には、主に医務室と食堂、そして厨房があった。
外観からは、この建物は三階建てだったので、階段を探す。
厨房を見ているときに、かまどのある場所で、床に四角く仕切られている箇所があるのを見つけた。
板から伸びるように床の色も周囲とは違っているので、普段から使われているらしい。
――スイリンさんの持っていた図面に、地下室は描かれてなかったはずだけど……。
マヒワは片膝をついて、床板を持ち上げた。
案の定、地下に降りる階段があり、その先は暗い空間に消えていた。
――地下の貯蔵庫かな? 何か気になる。
マヒワは降り口に顔を近づけ、地下室のなかの様子を窺う。
冷たい風が吹き登ってくる。
その風が微かな音を運んでいた。
さらに耳を澄ますと、うめき声のようにも聞こえる。
ときどき金属のこすれるような音も混じっていた。
それに生ぐさい臭い。
垢がたまって蒸れたような臭いだった。
――おじさん!
マヒワの直感がそう語っている。
マヒワは厨房を見渡した。
厨房では、ちょうど夕食の仕込みをしているときに非常招集がかかったのだろう、かまどに火が熾っていたが、調理中の大鍋は横にのけてあった。
かまどの火は、ほとんど消えかけている。
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